大きな屋根に覆われた薄暗い駅のホームで、ひときわ目につくオレンジの小さな建物「立喰いそば処 弁菜亭」これを見ただけでいつもほっとしてしまう、kobayashi(parking@ace)です。
長年、札幌駅ホームで親しまれる立ち食いそば
小さい頃は親父とよく2人で買い物帰りにこの立ち食いそば屋さんで食べ、学生時代は学校が終わってからすぐアルバイトだったので、30円(※2019年7月現在)追加でお持ち込み容器という蓋付きの白い発泡容器に入れてもらい、JR車内で食べてからそのままアルバイトに行く事もありました。
母が作るそばも美味しかったですが、本当にシンプルにだしの旨みを味わえる立ち食いそばは、なかなか家庭で真似をするのが難しい味です。
そしてお財布に優しい価格帯…かけそば一杯320円(※2019年7月現在)。自分が学生の時はもっと安かったように思いますが、それでもまだまだ安い。頼んでから2分後にはそばが届き、それを3分ほどで食べる。この早さも大きな魅力です。
長年札幌駅ホームで、JRが到着するちょっとした空き時間に忙しい人やそうじゃない人にも小腹を満たし続けるこのお店は、70年以上の歴史を誇る株式会社 札幌立売商会 商号「弁菜亭」が展開する立ち食いそば屋さんです。
立ち食いでそばの美味しさを知る
ここではよく「月見そば」を食べていました。
そばのつゆの良い香りに誘われ…ふらっと店先に立ち注文。女性が手際よくそばを湯切りに投入し茹で…ちょっと待ってからさっと湯切りしどんぶりに投入…すぐさま注がれるつゆの妖艶な輝きに、僕は生唾が溢れないよう何度も飲み込みました…。
そして最後にパカっと開いた卵から…キラリと艶やかに輝く生卵がつゆへ落ちる瞬間…僕の欲望バロメータはMAXを振り切る寸前です。そしてすぐさま目の前に月見そばが到着…この間およそ2分の出来事ですが…待ちに待ったかのような愛おしい気持ちを抑えつつ、まずは最初につゆを一口…。
うまい。
濃い色で透き通ったつゆは、素直なだしの旨みだけを良い香りとともに口の中に広がり…喉を通った後も、僕の欲望を満たしながら豊かに広がり続けます。これが一番ほっとする瞬間かもしれません。
3分間で味変を楽しみ食べ尽くす
つゆを一口飲み干した僕は落ち着きを取り戻し、バランスよく割れるよう丁寧に割り箸を割ります。それは3分間のお付き合いですが、僕とそばを繋ぐ架け橋となる割り箸への最低限の礼儀です。
そして架け橋がそばを口へ運んだら…もう止まりません。そば啜って…つゆ飲んで…。この間に温められ続け…うっすらと白く変化していく生卵には一切手をつけず、そば啜って…つゆ飲んで…を繰り返します。そばが半分ぐらいになったところで、いよいよ生卵に切れ目を入れます…。
どろっ。
艶めかしく濃厚な黄身が流れ出します。そこにそばを絡みつかせて…美味しそうに粘度が増したつややかなそれをどろりを口へ運ぶ…だしが甘みをともなって、また違った旨みで月見そば後半戦を楽しませてくれます。
後半戦といっても残り1分ほど…ずるずるずるずるすすって飲んで…気がついたらどんぶりは空になっています。最後はコップいっぱいの水を口に含み、残ったつゆの良い香りが余韻に浸ります。
満足感でこの時もまたほっとする…手際の良い女性店員さんに最高の「ごちそうさま」を残して店を後にします。
札幌駅のホームで見るとほっとする存在
社会人になってから…1年間東京で暮らして帰ってきた時、仕事で出張して東京から帰ってきた時などには、このオレンジ色の建物を見ると札幌に帰ってきたと実感がわきます。
そんな時には、あまりお腹が空いていないにも関わらず…そばを食べてしまいます。味にもほっとするし、この存在そのものがほっとする…。長年この札幌駅のホームで多くの人々を見守り続けたこの立ち食いそば屋さんは“我が街、札幌”の象徴だと僕は思い続けています。
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住 所:札幌市北区北6条西4丁目
JR札幌駅構内
電 話:011-213-5080
営業時間:6時50分~20時(日曜営業)
定休日:年中無休
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。